日本人なら誰もが知る「竹取物語」
その物語をかぐや姫の視点で描き切った意欲作
いやもうこれは、名作と呼んでも良いでしょう。
そもそも
竹取物語は竹取の翁こと、おじいさんの視点で描かれたものです。
ですから、かぐや姫の内面が描かれた箇所はありません。
せっかく手塩にかけて育てた娘が突然「月に帰ります」とタダをこねて帰っていく。
そんなふうに覚えている人も多いと思います。
制作に五年を費やしたとあります。
ストーリーをかなり練ったことが伺えます。
もう、かぐや姫が月に帰ることはどうしようもなかったのか?
なんとかできなかったのか?
あそこでああすれば、でもそれは…
と何度も思い巡らしてしまいます。
雅な宮廷生活の様子が描かれていますが、それはとても寂しく感じました。
野を駆けていた頃が一番輝いていたように思えます。
描写的にそんな差はなく、むしろ宮廷生活のほうが派手です。
それでも、心に穴が空いた感じでした。
いよいよ、クライマックス。
月に帰る理由とこの地球に来た理由を聞いて、すべて繋がった気がします。
誰が悪いわけでもないんです。
悪人なんていないんです。翁だって一生懸命大切にかぐや姫を思ってやったことだし。
帝が少々悪く描かれていますが、彼は彼なりにかぐや姫を愛そうとしたと思います。
月に連れ帰った一団も、なにもかぐや姫に意地悪したくてああなったわけじゃない。
出来ることなら、ずっと野を駆け巡る「たけのこ」のような娘でいて欲しかった。
きっと感じ方は千差万別になっていると思います。
生活がガラリと変わって、子供から大人の社会に入った時、もう一度見ると
感じ方が変わると思います。
お孫さんがおられるご家族がみるのと、若い夫婦がみるのとでは、また違うかもしれません。
恋真っ盛りの学生が見ても、感じ方は違うと思います。
何かに迷った時「かぐや姫の物語」を見ると、彼女が何かを伝えてくれるかもしれません