「このミステリーがすごい! 第一位」
「本格ミステリー 第一位」
これ、とっても胡散臭く思ってしまう私です。
感心して立ち読みすると、プロローグから「読ませる気ないんじゃないの?」て言うくらい平凡以下のものばっかり。
なので大抵買いません。
出版社がランキング操作しているのか、という疑いもいつも持ってます。
※本屋大賞だけは別です。あれは操作しようがありません。
今回扱う小説は、立ち読みからして読みやすく読ませてくる力があり気になっていました。
が、霊媒師翡翠がとっても胡散臭かった(なまじ自分に霊感あるのかいかん。夢が持てない)ので買うのは躊躇いました。
ですが、ブックパスで1000円分当たったので、じゃあハズレ覚悟で読みますかと相成りました。
読んでいくと、主人公香月の推理が稚拙でラノベかと思ってしまいます。
この本のジャンルは「文芸・ミステリー」に該当するため、多くの人は立ち読みで離れていったでしょう。
制作側がそのリスクを考えなかったはずはないです。
これは実績がある作家だからこそ打てるトリックです。
新人公募やレビューしたての作家がこれやったら一発アウト。よくやったと思います。
なぜこんな幼稚な推理と胡散臭い霊媒師バディで、「ミステリー一位」に選ばれたのか?
やはり出版社の工作なのか? それとも何かあるのか?
ここからすでにミステリーです。
最後まで。本当に最後の最後のところまで読まないと、分かりません。
これから読む読者にネタバレはしません。
ただ、「全ては伏線。冒頭からあなたの推理脳をフル活用してください」というアドバイスは差し上げましょう。
読了した今では、最高とは言えなくても最良のミステリー小説だと言えます。
一位に輝いたのは納得いきます。
あえて苦言を述べるなら
やはり冒頭のフックがあまりにもリスキーです。「ミステリー一位」の看板がなければ誰の目にも止まらなかったでしょう。
作家のファンがじわじわと口コミで売れるにしても、文芸なので限界はあります。
最後のシーン。
あまりにも台詞が多すぎます。ミステリーの王道を思いっきりぶち壊しながら進んでいくため、面食らう人もいるかも知れません。
どんなシーンなのかは、読んでのお楽しみです。
そして、これはごく一部の方、とくにプロ作家志望の人にしか影響はないのですが、
この本を参考にしてはダメです。
この本の構成で成功したのは、作者に実績があり宣伝効果があったからです。
ここまで小説の王道をぶち破って、なおまとめ上げた作家相沢沙呼に敬意を賞しますが、新人が参考になるものじゃありません。
まあ、概ねミステリーなんて誰かがやったトリックは二度と使えないと言われるくらい厳しい世界ですからね。
今までにないミステリー小説とは私では言うことが出来ません。
ほとんどこの手のジャンルを読まないからです。
でも、そんな私でも最後まで読んでびっくりしました。
ミステリー脳に自信がある方、あるいは平凡な方、両方にオススメできる稀有な作品です。
おすゝめです。